公开(公告)号:
JPWO2022191085A1
摘要:
質量%で、C:0.30~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.50%、Cr:11.0~15.0%、Ni:0.01~0.60%以下、Cu:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.0%、V:0.01~0.50%、Al:0.03%以下、N:0.01~0.05%、O:0.01%以下の鋼組成を有し、炭化物をJIS G 0555で規定されるグループB介在物に相当する介在物とした際、前記炭化物の炭化物清浄度指数が3.0以下、又は200倍の光学顕微鏡観察で2%以下の炭化物面積率、或いは全厚の抽出残差分析における10μmメッシュのフィルターで回収される粗大炭化物の量がCr量で0.6質量%以下であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。
权利要求:
1. 質量%で、C:0.30~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.50%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Cr:11.0~15.0%、Ni:0.01~0.60%以下、Cu:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.0%、V:0.01~0.50%、Al:0.03%以下、N:0.01~0.05%、O:0.01%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
(A)鋼板の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚1/2t±0.7mm領域に観察される炭化物をJIS G 0555で規定されるグループBの介在物に相当する介在物とした際、前記炭化物の炭化物清浄度指数が3.0以下、
(B)鋼板の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚1/2t±0.7mm領域に100倍の光学顕微鏡観察で観察される炭化物面積率が0.6%以下、
(C)全厚の抽出残差分析における10μmメッシュのフィルターで回収される粗大炭化物の量がCr量で0.6質量%以下、
を満たすことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。
ただし、上記(A)、(B)において前記炭化物は村上試薬で着色された部分であり、(A)においてJIS G0555の試験方法Aの定義での介在物清浄度を炭化物清浄度指数とする。上記(B)において、炭化物面積率はEBSD法で評価してもよい。
2. さらに、上記元素に加えて、前記Feの一部に替え、Sn:0.001%以上、0.20%以下、Co:0.001%以上、0.20%以下、Ti:0.005%以上、0.1%以下、Nb:0.005%以上、0.5%以下、Zr:0.005%以上、0.1%以下、W:0.005%以上、0.1%以下、B:0.0005%以上、0.0030%以下、Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、La:0.0001%以上、0.0030%以下、Ce:0.0001%以上、0.0030%以下、Y:0.0001%以上、0.0030%以下の1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
3. 質量%で、C:0.30~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.50%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Cr:11.0~15.0%、Ni:0.01~0.60%以下、Cu:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.0%、V:0.01~0.50%、Al:0.03%以下、N:0.01~0.05%、O:0.01%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
(A)製品の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚1/2t±0.7mmの領域に観察される炭化物をJIS G 0555で規定されるグループBの介在物に相当する介在物とした際、前記炭化物の炭化物清浄度指数が3.0以下、
(B)製品の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚1/2t±0.7mmの領域に100倍の光学顕微鏡観察で観察される炭化物面積率が0.6%以下、
(C)全厚の抽出残差分析における10μmメッシュのフィルターで回収される粗大炭化物の量がCr量で0.6質量%以下、
を満たすとともに、
板厚1/2t部の硬度がHv500以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス刃物製品。
ただし、上記(A)、(B)において前記炭化物は村上試薬で着色された部分であり、(A)おいてJIS G0555の試験方法Aの定義で介在物清浄度を炭化物清浄度指数とする。上記(B)において、炭化物面積率はEBSD法で評価してもよい。
背景技术:
【0002】 マルテンサイト系ステンレス鋼の一般的な用途と、各用途で使用されている鋼種を簡単に整理する。洋食器ナイフ(テーブルナイフ)やはさみ、織機部品、ノギス等の工具には、SUS420J1、SUS420J2鋼が一般に用いられ、更に高い硬度が必要となる洋式包丁や果物ナイフ等においてはSUS440A鋼やEN1.4034鋼、EN1.4116鋼が用いられている。また、二輪ディスクブレーキや鉄筋等の構造部材には、SUS410鋼が一般に用いられる。このような用途においては、防錆のためのメッキや塗装、防錆油の使用が困難であることと、摩耗に強い高い硬度が必要とされるからである。これらマルテンサイト系ステンレス鋼の規格はC量によって規定されており、SUS410はC:0.15%以下でCr:11.5~13.5%、SUS420J1はC:0.16~0.25%でCr:12~14%、SUS420J2はC:0.26~0.40%でCr:12~14%、SUS440AはC:0.60~0.75%でCr:16~18%と区分されている。又、EN1.4034はC:0.43~0.50%でCr:12.5~14.5%、EN1.4116はC:0.45~0.55%でCr:14.0~15.0%、Mo:0.5~0.8%、V:0.1~0.2%と規定されている。C量が高いほど高い焼入れ硬度が得られる反面、製造性や焼入れ後の靭性が低下するため、SUS410系では焼入れ状態で使用され、SUS420系以上の高炭素ステンレス鋼については焼入れ後に、サブゼロ処理と焼戻しを行なうことで靭性を改善することが一般である。
【0003】 これらステンレス鋼の耐食性については、一般に成分で整理される。鋼へのCr、Mo、Nの添加により耐食性が向上することが知られている。耐食性に及ぼす各元素の効果について多くの検討がなされており、マルテンサイト系ステンレス鋼においても、耐孔食性指数PRE=Cr+3.3Mo+16Nで整理でき、この値が大きいほど耐食性が向上すると報告されている。昨今では更に耐食性を向上させるため、微量のSn添加を行うことも検討されている。
【0004】 また、上記述べた鋼は焼入れ後に研摩して使用される場合があるため、大型の介在物を避け研摩性を向上させるために脱酸元素であるAl含有量を下げることも必要とされる。大型介在物は耐食性を損なう場合があるために、製鋼工程において精錬条件を最適化して大型介在物を低減し、耐食性を向上させる検討も行われている。
【0005】 また、炭化物の分散状態を制御することで、焼入れ時に溶体化を促進し熱処理時間を短縮すると共に、焼入れ焼き戻し後の靭性を向上させることを目的に、熱延条件を最適化する検討も行われている。
【0006】 これらの知見を特許文献で説明する。まず、特許文献1では、C:0.15%未満、Cr:12.0~18.5%、N:0.40%~0.80%を含有する耐食性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼について記載されている。
【0007】 窒素は耐食性の向上に有効であるほか、オーステナイト域を広げる安価な元素である。一方、溶解鋳造時に固溶限を超えた窒素が気泡を造り、健全な鋼塊が得られないことが問題となる。窒素の固溶限は成分や雰囲気の気圧によって変わる。成分としてはCr、C量の影響が大きく、SUS420J1,SUS420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼を大気圧下で鋳造した場合、窒素の溶解量は約0.1%程度と一般に報告されている。そこで、特許文献1では加圧鋳造法によって0.40%以上の窒素を固溶させている。しかし加圧鋳造法は連続鋳造への適用が困難であり、生産性が低く量産には不向きな方法であった。また、加圧鋳造でも窒素ブローが生じる問題があった。
【0008】 特許文献2では、耐食性を阻害する10μm以上の大型介在物(酸化物)を0.2個/cm2以下に低減した、製造性と耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼板が開示されている。介在物を低減するためには、Al含有量を0.02%以下、O含有量を0.001~0.01%に低減すると共に、溶解工程で撹拌をできるだけ1時間以内に低減し、その後、介在物浮
发明内容:
【発明が解決しようとする課題】
【0016】 一般に、ステンレス鋼の耐食性はその成分が大きく影響し、耐孔食指数PREなどで整理される。この数値が高いほど高い耐食性を有する。このときの耐食性とは、中性の塩化物水溶液環境での耐食性を指すものであり、評価方法として、例えばJIS G0577に規定されるステンレス鋼の孔食電位測定方法や、JISZ2371に規定される塩水噴霧試験方法などが用いられる。しかしながら、化学・食品プラントや温水器などの貯水槽、海浜環境で使われる用途以外、すなわち日常的な屋内環境において、高濃度の塩化物水溶液の乾湿環境に長時間される可能性は極めて少なく、洋食器ナイフとしてSUS420J1鋼が用いられているように、13%程度のCr量で十分な耐食性が得られる。また、二輪ディスクブレーキでは12%Crで十分な耐食性が得られる。
【0017】 ところが、母材の成分で想定される耐食性が得られない場合がある。代表的な耐食性劣化原因として鋭敏化がある。この現象は素材を溶接した場合などに、その溶接温度履歴によって鋼中にCr炭化物が析出し、そのCr炭化物の周辺の母地にCr欠乏層が生じ耐食性を損なう現象である。SUS430の溶接部や、SUS304を650~700℃で長時間使用すると鋭敏化が起こることが知られている。
【0018】 マルテンサイト系ステンレス鋼の鋭敏化現象はあまり知られていないが、市販のナイフを塩水噴霧試験に供すると、しばしば顕著なさびが認められることから、これらでは鋭敏化が生じていると推測される。マルテンサイト系ステンレス鋼は自硬性を有し、空気焼入れでも水焼き入れに匹敵する焼入れ硬度が得られるため、しばしば緩冷却で焼入れが行われる。このため冷却過程でCr炭化物が析出し鋭敏化を生じたものと推測される。ステンレス鋼における鋭敏化はC量の高い鋼種ほど促進されるため、EN1.4034鋼、EN1.4116鋼、SUS440系の鋼種などは鋭敏化が起こりやすく、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼の鋭敏化を抑制する技術が望まれていた。
【0019】 高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼の鋭敏化防止のために、油や水、塩浴など各種液体への焼入れや、金型焼入れを行っても、板厚が厚くなると十分な冷却速度が得られない。このため本発明は、焼入れ後に十分な冷却速度が得られない場合においても、鋭敏化が生じにくい、マルテンサイト系ステンレス鋼板及びその製造方法、並びにマルテンサイト系ステンレス刃物製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】 本発明者らは上記目的を達成するため、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼の焼入れ熱処理時における鋭敏化現象を詳細に調査し、凝固時のマクロ偏析に起因するB系介在物として評価した際の、合計長さが17μm以上である粗大な炭化物が鋭敏化を助長していることを突き止めた。一般に焼入れ加熱時は、オーステナイト粒径の粗大化を防ぐため、一部の炭化物が未固溶になりオーステナイト粒の成長を阻害するような温度で加熱を行う。そのために、焼入れ後も未固溶炭化物が微細分散した状態になる。焼入れ加熱時に生じたこれら大部分の炭化物は、比較的微細であり、これら炭化物の周辺には、焼入れ冷却時にCr欠乏層が形成することなく、耐食性を阻害しない。一方で、凝固時のマクロ偏析、セミマクロ偏析に起因する粗大な炭化物は、薄板製品の板厚中心部から1/4t部に数珠状に連続して析出し、この界面には容易にCr欠乏層が形成する傾向にある。したがって、そのような粗大な炭化物の析出量を低減することで、耐食性が向上するとの知見を得たものである。また、これらの粗大な炭化物はスラブの冷却過程において、600℃以上、800℃以下の温度域で5時間以上の炭化物変態処理を行うことにより、熱間圧延の加熱工程で溶体化しやすくなることを見出したものである。
【0021】 本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.30~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.50%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Cr:11.0~15.0%、Ni:0.01~0.60%以下、Cu:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.0%、V:0.01~0.50%、Al:0.03%以下、N:0.01~0.05%、O:0.01%以下、残部Fe及び不純物からなる鋼組成を有し、
(A)鋼板の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚中心±0.7mmの領域に観察される炭化物をJIS G 0555で規定されるグループBの介在物に相当する介在物とした際、前記炭化物の炭化物清浄度指数が3.0以下、
(B)鋼板の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において板厚中心±0.7mmの領域に100倍の光学顕微鏡観察で観察される炭化物面積率が0.6%以下、
(C)全厚の抽出残差分析における10μmメッシュのフィルターで回収される粗大炭化物の量がCr量で0.6質量%以下、
を満たすことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。
ただし、上記(A)、(B)において前記炭化物は村上試薬で着色された部分であり、(A)においてJIS G0555の試験方法Aの定義での介在物清浄度を炭化物清浄度指数とする。上記(B)において、炭化物面積率をEBSD法で評価してもよい。
(2)さらに、上記元素に加えて、前記Feの一部に替え、Sn:0.001%以上、0.20%以下、Co:0.001%以上、0.20%以下、Ti:0.005%以上、0.1%以下、Nb:0.005%以上、0.5%以下、Zr:0.005%以上、0.1%以下、W:0.005%以上、0.1%以下、B:0.0005%以上、0.0030%以下、Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、La:0.0001%以上、0.0030%以下、Ce:0.0001%以上、0.0030%以下、Y:0.0001%以上、0.0030%以下の1種以上を含むことを特徴とする(1)に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
【0022】(3)質量%で、C:0.30~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.50%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Cr:11.0~15.0%、Ni:0.01~0.60%以下、Cu:0.01~0.50%、Mo:0.01~1.0%、V:0.01~0.50%、Al:0.03%以下、N:0.01~0.05%、O:0.01%以下、残部Fe及び不純物からなる鋼組成を有し、
(A)製品の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において、板厚中心±0.7mmの領域に観察される炭化物をJIS G 0555で規定されるグループBの介在物に相当する介在物とした際、前記炭化物の炭化物清浄度指数が3.0以下、
(B)製品の圧延方向と板厚方向に平行な被検面において板厚中心±0.7mmの領域に100倍の光学顕微鏡観察で観察される炭化物面積率が0.6%以下、
(C)全厚の抽出残差分析における10μmメッシュのフィルターで回収される粗大炭化物の量がCr量で0.6質量%以下、
を満たすとともに、
板厚1/2t部の硬度がHv500以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス刃物製品。
ただし、上記(A)、(B)において前記炭化物は村上試薬で着色された部分であり、(A)においてJIS G0555の試験方法Aの定義での介在物清浄度を炭化物清浄度指数とする。上記(B)において、炭化物面積率をEBSD法で評価してもよい。
(4)さらに、上記元素に加えて、前記Feの一部に替え、Sn:0.001%以上、0.20%以下、Co:0.001%以上、0.20%以下、Ti:0.005%以上、0.1%以下、Nb:0.005%以上、0.5%以下、Zr:0.005%以上、0.1%以下、W:0.005%以上、0.1%以下、B:0.0005%以上、0.0030%以下、Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、La:0.0001%以上、0.0030%以下、Ce:0.0001%以上、0.0030%以下、Y:0.0001%以上、0.0030%以下の1種以上を含むことを特徴とする(3)に記載のマルテンサイト系ステンレス刃物製品。
【0023】(5)(1)又は(2)に記載の鋼組成のステンレス鋼スラブを鋳造し、その後のスラブの冷却過程において800~600℃の間で5時間以上の熱処理