IPC分类号:
D04H1/498 | D04H1/425 | D04H1/4258 | A45D44/22 | B32B5/06
国民经济行业分类号:
C1789 | C1781 | C3061 | C1779
代理人:
山尾 憲人 | 玄番 佐奈恵 | 津村 祐子
摘要:
適度な摩擦力を有し、かつ、表面が均一に平滑な積層不織布およびその製造方法を提供する。
【解決手段】第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1繊維層と前記第2繊維層との間に位置する中間繊維層と、を備え、前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、前記中間繊維層は、前記中間繊維層の総質量を基準として、合成繊維を50質量%以上含み、前記第1繊維層と前記中間繊維層と前記第2繊維層とは、繊維同士の交絡により一体化されている、積層不織布。
技术问题语段:
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上層および下層に、ポリエチレンテレフタレート繊維とビスコースレーヨンとを含む複合素材を使用している。使い捨てシートの用途は多岐にわたり、また、使用者も様々であるため、従来にない触感等を有する不織布は常に求められている。
【0005】
本開示は、セルロース繊維の特性に着目し、特に使い捨てシートの素材として適する適度な摩擦力および平滑な表面を有する積層不織布を提供することを目的とする。
技术功效语段:
【0008】本開示によれば、適度な摩擦力を有し、かつ、表面が平滑な積層不織布およびその製造方法が提供される。本開示によれば、また、この積層不織布を用いた液体含浸シート、液体含浸皮膚被覆シート、およびフェイスマスクが提供される。
权利要求:
【請求項1】
第1繊維層と、
第2繊維層と、
前記第1繊維層と前記第2繊維層との間に位置する中間繊維層と、を備え、
前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、
前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、
前記中間繊維層は、前記中間繊維層の総質量を基準として、合成繊維を50質量%以上含み、
前記第1繊維層と前記中間繊維層と前記第2繊維層とは、繊維同士の交絡により一体化されている、
積層不織布。
【請求項2】
複数の前記合成繊維は、互いに熱接着されていない、請求項1に記載の積層不織布。
【請求項3】
前記第1繊維層における前記撥水性セルロース繊維の質量割合と、前記第2繊維層における前記撥水性セルロース繊維の質量割合との差は、10%以下である、請求項1または2に記載の積層不織布。
【請求項4】
前記合成繊維の繊維長は、80mm以下である、請求項1または2に記載の積層不織布。
【請求項5】
前記積層不織布の目付は、30g/m 2以上90g/m 2以下である、請求項1または2に記載の積層不織布。
【請求項6】
請求項1または2に記載の積層不織布を含む、液体含浸シート用積層不織布。
【請求項7】
第1繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含む、第1繊維ウェブを準備すること、
第2繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含む、第2繊維ウェブを準備すること、
中間繊維ウェブの総質量を基準として、合成繊維を50質量%以上含む、中間繊維ウェブを準備すること、
前記第1繊維ウェブと前記中間繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとを、この順に重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、および、
前記積層繊維ウェブを、高圧流体流を用いた交絡処理に付して繊維同士を交絡させること、を含む、
積層不織布の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の積層不織布100質量部に対して、液体を200質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、液体含浸シート。
【請求項9】
請求項1または2に記載の積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、液体含浸皮膚被覆シート。
【請求項10】
請求項1または2に記載の積層不織布100質量部に対して、液体を500質量部以上2000質量部以下の量で含浸させてなる、フェイスマスク。
技术领域:
】
【0001】
本開示は、積層不織布およびその製造方法、および、当該不織布を用いた液体含浸シート、液体含浸皮膚被覆シート、ならびにフェイスマスクに関する。
【
背景技术:
】
【0002】
近年、清潔志向や美容意識が高まっている。そのため、清掃に用いられるワイプ、清浄および清拭に用いられる対人用のワイプ、フェイスマスクなど、種々の使い捨てのシートが提案されている。例えば、特許文献1は、三層構造の不織布であって、中層がセルロース系短繊維を含むセルロース系短繊維層であり、上層および下層が、繊度が0.5dtexよりも大きい繊維を90質量%よりも多く含む繊維層であるシートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】
特開2007-7062号公報
【
发明内容:
】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上層および下層に、ポリエチレンテレフタレート繊維とビスコースレーヨンとを含む複合素材を使用している。使い捨てシートの用途は多岐にわたり、また、使用者も様々であるため、従来にない触感等を有する不織布は常に求められている。
【0005】
本開示は、セルロース繊維の特性に着目し、特に使い捨てシートの素材として適する適度な摩擦力および平滑な表面を有する積層不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1繊維層と前記第2繊維層との間に位置する中間繊維層と、を備え、前記第1繊維層は、前記第1繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、前記第2繊維層は、前記第2繊維層の総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、前記中間繊維層は、前記中間繊維層の総質量を基準として、合成繊維を50質量%以上含み、前記第1繊維層と前記中間繊維層と前記第2繊維層とは、繊維同士の交絡により一体化されている、積層不織布を提供する。
【0007】
本開示はまた、第1繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含む、第1繊維ウェブを準備すること、第2繊維ウェブの総質量を基準として、撥水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含み、親水性セルロース繊維を10質量%以上90質量%以下含む、第2繊維ウェブを準備すること、中間繊維ウェブの総質量を基準として、合成繊維を50質量%以上含む、中間繊維ウェブを準備すること、前記第1繊維ウェブと前記中間繊維ウェブと前記第2繊維ウェブとを、この順に重ね合わせて積層繊維ウェブを作製すること、および、前記積層繊維ウェブを、高圧流体流を用いた交絡処理に付して繊維同士を交絡させること、を含む、積層不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、適度な摩擦力を有し、かつ、表面が平滑な積層不織布およびその製造方法が提供される。本開示によれば、また、この積層不織布を用いた液体含浸シート、液体含浸皮膚被覆シート、およびフェイスマスクが提供される。
【
具体实施方式:
】
【0009】
外層におけるレーヨンと合成繊維との併用は、積層不織布の表面を過度に滑り易くし、乾燥状態および湿潤状態における摩擦力を低下させる。また、外層におけるレーヨンと合成繊維との併用は、湿潤状態の積層不織布の表面に凹凸を形成させるため、平滑性を低下させる。
【0010】
本実施形態に係る積層不織布は、両外層に、親水性セルロース繊維と、撥水性を付与したセルロース繊維(撥水性セルロース繊維)とを備える。そのため、本実施形態に係る積層不織布の表面は、例えば合成繊維を使用して外層を形成したものと比較して、適度な摩擦力を有する。
【0011】
適度な摩擦力により、積層不織布が手に触れたとき、これを皮膚に密着させて使用するとき、またはこれで対象物を拭き取るときに、適度な抵抗感が生じる。この抵抗感は、使用者に心地よい触感や、汚れが拭き取れている感覚、肌と密着している感覚を与える。さらに、本実施形態に係る積層不織布の摩擦力は、対象物に対する密着性の向上に寄与し得る。摩擦力は、セルロース繊維が膨潤するとより高まり易い。上記の摩擦力は、例えば、後述する動摩擦係数MIUで表される。
【0012】
外層に撥水性セルロース繊維を混合することにより、適度な摩擦力が発揮されるのは、撥水性セルロース繊維が、通常の親水性のセルロース繊維とも合成繊維とも異なる特性を有しているためと考えられる。例えば、撥水性セルロース繊維自体が非常に柔軟であり、撥水性付与前のセルロース繊維よりも柔軟性が高い場合もある。これが、適度な摩擦力の発現に寄与していると考えられる。この柔軟性はまた、積層不織布の密着性をより向上させる。密着性と摩擦力とは相補的であって、高い密着性は適度な摩擦力の発現を促進し、適度な摩擦力は密着性を向上させる。
【0013】
積層不織布を構成する各繊維層が、水流交絡により一体化されている場合、撥水性セルロース繊維の交絡度は低くなり易い。そのため、積層不織布は、さらに適度な摩擦力を発現し易く、より柔軟になり易い。
【0014】
適度な摩擦力は、本実施形態に係る積層不織布が、液体が含浸された湿潤状態のときにより高まり易い。湿潤状態の積層不織布の摩擦力は、例えば、後述する湿潤状態の積層不織布の動摩擦係数MIUで表される。
【0015】
これは、撥水性セルロース繊維が、湿潤状態においてより柔軟になって強度が小さくなり易いためと考えられる。撥水性セルロース繊維は、通常の疎水性合成繊維のように撥水性を有しているが、この撥水性は繊維表面において発揮される。撥水性セルロース繊維の内部は、依然として吸水および保水する機能を備えている。そのため、撥水性セルロース繊維(特に撥水性レーヨン)の公定水分率は撥水処理されていない同種のセルロース繊維と同等であり、その二次膨潤度は撥水処理されていないセルロース繊維よりは劣るが、一般的な合成繊維のそれよりも高い傾向にある。例えば、撥水処理されていないビスコースレーヨンとして二次膨潤度(水膨潤度:JIS L1015:2010 8.26に従って測定される)が80%以上90%以下程度のものがあり、撥水性レーヨンとして二次膨潤度が45%以上55%以下程度のものがある。また、撥水性レーヨンとして公定水分率(JIS L 1015に準じて測定される)が10%以上12%以下程度のものがあり、これは撥水処理されていない一般的なレーヨンの公定水分率(11%)と同等である。
【0016】
疎水性の合成繊維は、公定水分率が低く膨潤し難い。つまり、疎水性の合成繊維は、吸水も保水もし難い。そのため、湿潤状態の積層不織布の摩擦力は、本実施形態に係る積層不織布より劣る。
【0017】
撥水性セルロース繊維が吸水し易いことは、平滑性の向上に貢献する。本実施形態に係る積層不織布に水性液体を含浸させると、外層に位置する親水性セルロース繊維および撥水性セルロース繊維はいずれも吸水して膨潤する。そのため、積層不織布表面に親水性セルロース繊維との膨潤度の違いに起因する凹凸を生じ難く、平滑になると考えられる。上記の凹凸は、例えば、後述する動摩擦係数MIUの変動係数MMDで表される。
【0018】
特許文献1のように、外層が合成繊維と親水性繊維との複合素材であると、膨潤度に差があるため外層に凹凸が生じる。この凹凸は、ざらつき感の原因となり得、また、積層不織布の対象物に対する密着性を低下させる。本実施形態に係る積層不織布は、湿潤状態においてもざらつき感が抑制され、高い密着性を有する。さらに、本実施形態に係る積層不織布は、外層に合成繊維を含む積層不織布よりも表面の毛羽が少ない。このことも、上記変動係数MMDが小さいことに寄与していると考えられる。
【0019】
水性液体が含浸された積層不織布において、親水性セルロース繊維の表面に吸着している水性の液体は、撥水性セルロース繊維によって外層の外側に押し出されて、積層不織布の表面に移動し易い。油性の液体も同様に、親水性セルロース繊維によって外層の外側に押し出されて、積層不織布の表面に移動し易い。これにより、液体が含浸された積層不織布の凹凸はさらに小さくなって、ざらつき感が抑制されるとともに、対象物に対してより優れた密着性を示し得る。
【0020】
内側の層は合成繊維を含むため、積層不織布はクッション性を有している。本明細書において、「クッション性」とは、弱い力(例えば、0.3kPa±0.01kPaの荷重、代表的には、0.294kPaの荷重)でも変形することのできる性質をいう。これにより、使用の際、積層不織布が柔らかく感じられて、積層不織布の触感が向上する。さらに、本実施形態に係る積層不織布を含むフェイスマスクは、顔に貼り易い。
【0021】
一方で、内側の層の合成繊維によって、積層不織布は圧縮に対して変形(塑性変形)し難い傾向にある。すなわち、本開示に係る積層不織布は、強い力(例えば、6kPa±0.3kPaの荷重、代表的には、5.8kPaの荷重)で変形を生じさせたときに、その変形から元の形状に回復することができる。そのため、積層不織布が圧縮状態で保存されていても、使用する際には初期の嵩高い感じを得ることができて、やはり、積層不織布の触感が向上する。
【0022】
また、湿潤状態でも内層の合成繊維層で空間が保持されるため、液保持性が向上する。加えて、積層不織布のハンドリング性が向上する。本実施形態に係る積層不織布を合成繊維同士が接着される程度に熱処理すると、強度が高くなる。このような積層不織布はよれにくく、ワイプとして適している。
【0023】
[積層不織布]
本実施形態に係る積層不織布は、第1繊維層、第2繊維層および中間繊維層を含む。不織布は、JIS L 0222に「繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交絡、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮じゅう(絨)フェルトを除く。」と定義されている。
【0024】
積層不織布において、各繊維層は積層されており、少なくとも繊維同士の交絡によって、一体化されている。積層される前の各繊維層は、不織布であってよく、不織布の前駆体であってよい。不織布の前駆体とは、繊維シート、ウェブまたはバットであって、繊維が一方向又はランダムに配向しているが、繊維間が結合されていないものである。積層される前の各繊維層の作製法は、特に限定されない。積層不織布の製造に使用される各繊維層(ウェブ)は、カード式法、エアレイド法または湿式法等により作製される不織布の前駆体であってよく、水流交絡(スパンレース)法、スパンボンド法または湿式法等により作製される不織布であってよい。
まず、本実施形態で使用される繊維層を構成する繊維を説明する。
【0025】
(撥水性セルロース繊維)
撥水性セルロース繊維は、親水性セルロース繊維とともに、第1および第2繊維層に含まれる。
セルロース繊維は本来親水性を有するものであるが、本実施形態では人為的に撥水性を付与したセルロース繊維を「撥水性セルロース繊維」と呼び、これを用いる。
【0026】
セルロース繊維の種類は特に限定されない。セルロース繊維は、以下を含む。
(1)綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプおよびカポック等の植物に由来する天然繊維;
(2)ビスコース法で得られるレーヨンおよびポリノジック、銅アンモニア法で得られるキュプラ、ならびに溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)およびリヨセル等の溶剤紡糸セルロース繊維、ならびにその他の再生繊維;
(3)溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;
(4)アセテート繊維等の半合成繊維;および
(5)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ
【0027】
撥水性セルロース繊維は、これらのセルロース繊維に撥水剤を付着させることで撥水性を付与したものであってよい。あるいは、撥水性セルロース繊維は、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を有するセルロース繊維を、イソシアネート系化合物および非フッ素系撥水剤を含む処理液で処理する方法で得られたものであってよい。かかる方法で得られる撥水性セルロース繊維は、例えば、特開2019-65443号に開示されている。
【0028】
撥水性セルロース繊維は、液体を含浸させた場合に親水性セルロース繊維とともに膨潤する。その膨潤度は、親水性セルロース繊維よりも小さいものの、合成繊維よりは十分に大きい。そのため、湿潤状態の積層不織布は平滑になりやすい。平滑性の観点から、撥水性セルロース繊維は、撥水性の再生繊維を含むことが好ましい。柔軟性の観点から、撥水性セルロース繊維は、結晶性の低い(例えば、平均重合度450未満の)撥水性のレーヨンを含むことがより好ましい。レーヨンは、その断面形状が菊花状であるため、摩擦力が得られ易い点でも好ましい。水分率が経時変化し難い点で、撥水性のレーヨンを外層に含む積層不織布は、一定時間、皮膚を被覆するために使用される皮膚被覆シートに適している。
【0029】
撥水性レーヨンとしては、例えば、ダイワボウレーヨン(株)製のエコリペラス(商品名、撥水性ビスコースレーヨン)、Kelheim Fibres GmbH製のOlea(商品名、撥水性ビスコースレーヨン)等が上市されている。本実施形態においては、これらの撥水性レーヨンを用いてよい。特に、エコリペラス(商品名)は高い撥水性を示し、また、耐久性の高い撥水性を有し、例えば水流交絡処理に付された場合でも撥水性が低下しにくいことから好ましく用いられる。
【0030】
撥水性セルロース繊維の繊度は、0.2dtex以上であってよく、0.3dtex以上であってよく、0.4dtex以上であってよく、0.6dtex以上であってよく、1.0dtex以上であってよく、1.4dtex以上であってよい。撥水性セルロース繊維の繊度は、6.0dtex以下であってよく、4.0dtex以下であってよく、3.0dtex以下であってよく、2.0dtex以下であってよい。一態様において、撥水性セルロース繊維の繊度は、0.6dtex以上3.3dtex以下である。撥水性セルロース繊維の繊度が上記範囲であると、第1および/または第2繊維層に適度な空隙が形成されて、液体が保持され易くなる。さらに、積層不織布の触感が良好になり易い。撥水性セルロース繊維の繊度は上記範囲に限定されない。特に天然繊維は繊度の調整が難しいため、セルロース繊維として上記範囲外の繊度のものを使用してよい。
【0031】
撥水性セルロース繊維の繊維長は特に限定されず、素材、その製造方法、第1および/または第2繊維層の作製方法、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。撥水性セルロース繊維は、例えば、短繊維である。第1および/または第2繊維層がカードウェブから作製される場合、撥水性セルロース繊維の繊維長は、100mm以下であってよく、75mm以下であってよく、65mm以下であってよい。上記の短繊維の撥水性セルロース繊維の繊維長は、10mm以上であってよく、20mm以上であってよく、30mm以上であってよい。第1および/または第2繊維層がカードウェブから作製される場合、一態様における撥水性セルロース繊維の繊維長は、10mm以上100mm以下である。第1および/または第2繊維層がエアレイドウェブから作製される場合、撥水性セルロース繊維の繊維長は、2mm以上20mm以下であってよい。
【0032】
本実施形態においては、素材、繊維長および繊度のうち一つまたは複数が異なる撥水性セルロース繊維を、複数用いてもよい。
【0033】
撥水性セルロース繊維の撥水性は、例えば薬食機発第0630001号の医療ガーゼ·医療脱脂綿の基準に従い、以下の方法で測定される沈降速度(6(1)カ)により評価できる。
積層不織布製造前の撥水性セルロース繊維あるいは積層不織布から採取した繊維を、カード機で解繊し、繊維集合体を準備する。この繊維集合体10gを、径0.4mmの銅線を用いて作った、径50mm、深さ80mm、線と線の距離20mm、重さ3gの試験かごの中に均等に入れる。試験かごを横にして、水温24~26℃の水面上12mmの高さから、深さ200mmの水の中に静かに落とす。試験かごを落としてから水面下に沈むまでの時間を、撥水性セルロース繊維の沈降速度とする。
【0034】
撥水性セルロース繊維をカード機で解繊できない場合(例えば、繊維長が短い場合等)、採取された繊維10gを、そのまま試験かごの中に入れてよい。あるいは、撥水性セルロース繊維が繊維集合体(例えば、湿式不織布またはエアレイド不織布)の形態を既にとっており、これをカード機で解繊することが難しい場合には、1cm×1cmの大きさに切断した不織布片10g分を試験かごの中に入れるとよい。
【0035】
撥水性セルロース繊維の沈降速度は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が特に好ましい。なかでも、試験かごを水中に落としてから10分経過した時点で、少なくとも一部の撥水性セルロース繊維が水面下に沈降してないことが好ましい。このとき、撥水性セルロース繊維は吸水していてもよい。特に、1分経過した時点で、撥水性セルロース繊維の一部ないし全部が水面に浮いていることが好ましい。
【0036】
(親水性セルロース繊維)
第1繊維層および第2繊維層はそれぞれ、親水性セルロース繊維を含む。第1および第2繊維層が親水性セルロース繊維を所定割合以上含むことで、積層不織布の保水性および密着性が向上する。以下、第1および第2繊維層に含まれる親水性セルロース繊維を、「外層用親水性セルロース繊維」と称す場合がある。
【0037】
「親水性セルロース繊維」という用語は、撥水性セルロース繊維と区別するために用いられるものであり、撥水性が付与されておらず、本来の親水性を有するセルロース繊維を指す。親水性セルロース繊維の例は、撥水性セルロース繊維に関して説明したとおりである。
【0038】
外層用親水性セルロース繊維は、コットンおよび再生繊維のいずれか一方を含むことが好ましい。再生繊維は、繊度の調整が容易であり、そのばらつきが小さい点でより好ましい。柔軟性の観点から、特にレーヨンが好ましい。親水性セルロース繊維としてレーヨンを含む積層不織布は、湿潤状態で使用される後述する皮膚被覆シート(例えば、フェイスマスク)に特に適している。剛軟度が比較的大きくなり易い点で、溶剤紡糸セルロース繊維がより好ましい。親水性セルロース繊維として溶剤紡糸セルロース繊維を含む積層不織布は、皮膚被覆シート以外の湿潤状態で使用されるシートや、乾燥状態で使用されるシート(例えば、ウェットタイプまたはドライタイプのワイプ)に特に適している。
【0039】
外層用親水性セルロース繊維の繊維長は特に限定されず、素材、その製造方法、第1および/または第2繊維層の作製方法、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択してよい。外層がカードウェブから作製される場合、外層用親水性セルロース繊維の繊維長は、100mm以下であってよく、75mm以下であってよく、65mm以下であってよい。この場合、外層用親水性セルロース繊維の繊維長は、10mm以上であってよく、20mm以上であってよく、30mm以上であってよい。外層が長い親水性セルロース繊維を所定割合以上含むことで、繊維同士の交絡が確保され、もって積層不織布の一体性が確保される。外層がエアレイドウェブから作製される場合、外層用親水性セルロース繊維の繊維長は、2mm以上20mm以下であってよい。
【0040】
親水性繊維の上記沈降速度は、60秒以内であってよく、50秒以内であってよく、45秒以内であってよく、30秒以内であってよい。
【0041】
外層用親水性セルロース繊維の繊度は、例えば、0.2dtex以上であってよく、0.3dtex以上であってよく、0.4dtex以上であってよく、0.6dtex以上であってよい。外層用親水性セルロース繊維の繊度は、例えば、5.0dtex以下であってよく、4.5dtex以下であってよく、4.0dtex以下であってよく、3.0dtex以下であってよく、2.0dtex以下であってよい。一態様において、外層用親水性セルロース繊維の繊度は、0.2dtex以上5.0dtex以下である。外層用親水性セルロース繊維の繊度が小さすぎると、不織布に繊維塊(ネップ)が生じやすくなり、大きすぎると不織布の触感が低下することがある。外層用親水性セルロース繊維の繊度はこれらの範囲に限定されない。特に天然繊維を使用する場合には、繊度の調整が難しいことから、上記範囲外の繊度のものを使用してよい。
【0042】
第1および第2繊維層は、素材、繊維長および繊度のうち一つまたは複数が異なる、複数種の外層用親水性セルロース繊維を含んでよい。第1および第2繊維層に含まれる外層用親水性セルロース繊維の素材、繊維長および繊度は同じであってよく、少なくとも一つが異なっていてもよい。
【0043】
繊維の素材の分類は、例えば消費者庁から公表されている「繊維の名称を示す用語」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/fiber/fiber_term.html)における「繊維等の種類」に従う。
【0044】
(合成繊維)
合成繊維は、中間繊維層に含まれる。これにより、積層不織布のクッション性が向上する一方、変形から回復し易くなる。そのため、積層不織布の触感が向上する。また、湿潤状態でも内層の合成繊維層で空間が保持されるため、液保持性が向上する。加えて、積層不織布のハンドリング性が向上する。
【0045】
合成繊維は、通常、熱可塑性樹脂により形成される。熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂;アクリロニトリルを構成成分として含むアクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング·プラスチック、ならびにそれらのエラストマーよりなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0046】
合成繊維は、単一繊維であってよく、および/または複合繊維であってよい。単一繊維は、繊維断面が1つのセクションからなり、複合繊維は、その繊維断面が複数のセクションを有する。複合繊維は、例えば、同心または偏心の芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、または分割型複合繊維等であってよい。繊維の断面は円形であっても非円形であってもよい。非円形の形状としては、楕円形、Y形、X形、井形、多葉形、多角形、星形等が挙げられる。合成繊維は、中空断面を有していてもよい。単一繊維および複合繊維のいずれの場合も、複合繊維を構成する各セクションは、一種類の樹脂からなっていてよく、あるいは二種以上の樹脂が混合されたものであってよい。
【0047】
合成繊維は、分割型複合繊維であってよい。分割型複合繊維は、水流交絡処理により分割して、極細繊維を形成する。これにより、交絡がより進行する。そのため、得られる積層不織布は、緻密化して厚みが小さいものとなり、また、極細繊維の交絡により比較的剛性の小さいものとなる。
【0048】
複合繊維において、融点の最も低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。その場合、積層不織布を生産する工程において、最も融点が低い熱可塑性樹脂からなる成分(以下、「低融点成分」)が溶融または軟化する条件で熱を加えると、低融点成分が接着成分となる。このような合成繊維は、接着性繊維として機能し得る。
【0049】
融点のより高い熱可塑性樹脂である第1成分と、融点のより低い熱可塑性樹脂である第2成分とからなる複合繊維を構成する樹脂の組み合わせ(第1/第2)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体等のポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、ならびにポリプロピレン/ポリエチレン、およびポリプロピレン/プロピレン共重合体等の二種類のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の組み合わせ、および融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせである。
【0050】
あるいは、第1成分と第2成分の組み合わせは、生分解性を有する樹脂の組み合わせであってよく、そのような組み合わせによれば積層不織布における生分解性繊維の割合をより大きくすることができる。具体的には、第1成分をポリ乳酸、第2成分をポリブチレンサクシネートとすることで接着性繊維を生分解性のものとし得る。
【0051】
あるいは、第1成分と第2成分の組み合わせは、植物由来の原料(バイオマス原料)を用いた熱可塑性樹脂であってよい。この組み合わせによれば、積層不織布におけるバイオマス原料の割合をより大きくすることができる。具体的な樹脂の組み合わせとしては、第1成分をバイオポリエステル/バイオポリエチレン、バイオポリエステル/バイオポリプロピレン、バイオポリプロピレン/バイオポリエチレン、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0052】
合成繊維の繊度は、例えば、0.3dtex以上であってよく、0.6dtex以上であってよく、0.9dtex以上であってよく、1.3dtex以上であってよく、1.5dtex以上であってよく、1.6dtex以上であってよい。合成繊維の繊度は、例えば、4.0dtex以下であってよく、2.5dtex以下であってよく、2.4dtex以下であってよく、2.2dtex以下であってよい。一態様において、合成繊維の繊度は、0.3dtex以上4.0dtex以下である。
【0053】
分割型複合繊維は、その繊維断面において、2以上のセクションを有する。各セクションは、それぞれ単一成分により構成されていてよい。複数の構成成分が、それぞれ複数のセクションに分割されていてよい。各セクションの少なくとも一部は繊維表面に露出し、その露出部分は、繊維の長さ方向に連続的に存在している。分割型複合繊維は、菊花状に並べられた複数の楔形のセクションを有していてよい。分割型複合繊維は、繊維断面において層状に並んだ複数のセクションを有していてよい。分割型複合繊維は、長さ方向に連続する空洞部分を有さない、いわゆる中実断面を有していてよい。分割型複合繊維は、長さ方向に連続する1以上の空洞部分を有する、いわゆる中空断面を有していてよい。
【0054】
分割型複合繊維の分割数(即ち、複合繊維におけるセクションの数)は、例えば、4以上、32以下であってよく、特に4以上、20以下であってよく、より特には6以上、10以下であってよい。分割型複合繊維の分割後の繊度は、例えば、0.1dtex以上1.0dtexであってよい。
【0055】
合成繊維は、ポリエステル系樹脂を含んでいてよい。これにより、中間繊維層がより嵩高になり易く、剛性も大きくなり易い。特に、ポリエチレンテレフタレートを含んでいてよい。芯成分および鞘成分として異なるポリエステル系樹脂を含む、芯鞘型複合繊維であってよい。
【0056】
合成繊維は、ポリオレフィン系樹脂を含んでいてよい。これにより、変形からより回復し易い積層不織布を得ることができる。特に、ポリプロピレンを含んでいてよい。芯成分としてポリプロピレン、鞘成分としてポリエチレンを含む、芯鞘型複合繊維であってよい。
【0057】
合成繊維は、ポリアミド系樹脂およびアクリロニトリル系樹脂を含んでいてよい。このような合成繊維は、比較的大きな公定水分率を有するため、積層不織布の保水性が大きくなり易い。ナイロン繊維の公定水分率は4.5%であり、アクリロニトリルの質量割合が85%以上のアクリロニトリル系合成繊維の公定水分率は2.0%である。特に、ポリアクリロニトリル系樹脂を含んでいてよい。
【0058】
合成繊維の繊維長は特に限定されず、上記の通り、素材、その製造方法、中間繊維層の作製方法、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択される。合成繊維は、繊維長100mm以下の短繊維であってよく、繊維長100mm超の長繊維であってよい。なかでも、嵩高い積層不織布が得られ易い点で、短繊維が好ましい。繊維長は、80mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。合成繊維の長繊維を用いる場合、例えば中間繊維層の目付を調整して、積層不織布の剛軟度やクッション性を制御してもよい。
【0059】
合成繊維の沈降速度は、繊維を構成する合成樹脂そのものの親水性/疎水性だけでなく、合成繊維表面に界面活性剤などの繊維処理剤を付与したり、親水化処理または疎水化処理が行われることにより変化する。例えば、表面に付与された繊維処理剤が除去された疎水性合成繊維の沈降速度は、1分以上であり、5分以上であってよく、10分以上であってよい。親水性の繊維処理剤で処理された合成繊維の沈降速度は、60秒以内であってよく、50秒以内であってよく、45秒以内であってよく、30秒以内であってよい。合成繊維の表面に付与された繊維処理剤は、水流交絡処理によって脱落し得る。そのため、表面処理された合成繊維の沈降速度もまた、変化し得る。
【0060】
中間繊維層は、素材、繊維長および繊度のうち一つまたは複数が異なる、複数種の合成繊維を含んでよい。中間繊維層は、例えば、ポリエステル系樹脂を含む繊維と、ポリオレフィン系樹脂を含む繊維とを含んでいてよい。
【0061】
(他の繊維)
第1および第2繊維層は、その効果を妨げない範囲において、上記の撥水性セルロース繊維および親水性セルロース繊維(以下、セルロース繊維と総称する場合がある。)以外の繊維を含んでよい。中間繊維層は、その効果を妨げない範囲において、合成繊維以外の繊維を含んでよい。
【0062】
第1および/または第2繊維層に含まれ得る他の繊維としては、例えば、セルロース繊維以外の親水性繊維、上記の合成繊維および接着性を有する繊維が挙げられる。中間繊維層に含まれ得る他の繊維としては、例えば、親水性繊維(セルロース繊維を含む)、上記の撥水性セルロース繊維、および接着性を有する繊維が挙げられる。以下、これらの繊維を説明する。
【0063】
親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維以外の天然繊維(例えば、シルク、ウール)、親水性を有する合成繊維、および、親水化処理が施された合成繊維(公定水分率が5%未満の合成繊維)が挙げられる。親水化処理としては、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト重合処理、繊維への親水化剤の練り込み、および耐久性油剤の塗布が挙げられる。
【0064】
親水性繊維の上記沈降速度は、60秒以内であってよく、50秒以内であってよく、45秒以内であってよく、30秒以内であってよい。
【0065】
親水性繊維の繊度は、混合される他の繊維の繊度等に応じて、適宜選択される。親水性繊維が第1および/または第2繊維層に含まれる場合、その繊度は、親水性セルロース繊維と同様であってよい。親水性繊維が中間繊維層に含まれる場合、その繊度は、合成繊維と同様であってよい。
【0066】
親水性繊維の繊維長は特に限定されず、上記の通り、素材、その製造方法、繊維層の作製方法、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択される。親水性繊維が第1および/または第2繊維層に含まれる場合、その繊維長は、親水性セルロース繊維と同様であってよい。親水性繊維が中間繊維層に含まれる場合、その繊維長は、合成繊維と同様であってよい。
【0067】
<接着性繊維>
接着性繊維は、繊維同士を接着する。これにより、積層不織布の強度が向上するとともに、過度の伸びが抑制される。特に、積層不織布の10%伸長時応力が大きくなり易い。積層不織布の過度の伸びが抑制されると、ハンドリング性(例えば、使用する際の積層不織布の広げ易さ)が向上し易い。
【0068】
一方、繊維同士が過度に接着すると、積層不織布の剛性が高くなりすぎて、密着性が低下し易い。特に、積層不織布を皮膚被覆シートに用いる場合、繊維同士は接着されていないことが好ましい。
【0069】
接着性繊維は、第1繊維層、第2繊維層および中間繊維層のいずれの繊維層に含まれてもよい。風合いの低下が抑制される点で、接着性繊維は中間繊維層に含まれることが好ましい。
【0070】
接着性繊維は、例えば、上記の合成繊維である。接着性繊維は、接着性を発現した状態で繊維層に含まれる合成繊維であり得る。合成繊維は、一般に、加熱により接着性を示す。接着性繊維はこれに限定されず、熱接着性でなくてよく、合成繊維でなくてもよい。接着性繊維は、接着性を有する上記の親水性繊維あってよい。接着性繊維の繊度は、例えば、上記した合成繊維の繊度と同程度であってよい。
【0071】
接着性繊維の繊維長は特に限定されず、上記の通り、素材、その製造方法、繊維層の作製方法、積層不織布の製造方法等に応じて適宜選択される。接着性繊維が第1および/または第2繊維層に含まれる場合、その繊維長は、撥水性セルロース繊維と同様であってよい。接着性繊維が中間繊維層に含まれる場合、その繊維長は、合成繊維と同様であってよい。
【0072】
(第1繊維層および第2繊維層)
第1および第2繊維層は、積層不織布の外側に位置し、対象物(例えば、皮膚)との接触面となり得る。第1および第2繊維層は、撥水性セルロース繊維と、親水性セルロース繊維(外層用親水性セルロース繊維)との両方を含む。この組み合わせによって、積層不織布は、適度な摩擦力を有し、その一方、表面は平滑になる。さらに、外層用親水性セルロース繊維は、後述するように繊維同士を高圧流体流、特に高圧水流を噴射して交絡させる場合に、繊維同士の交絡を促し、積層不織布の一体性を確保する。
【0073】
撥水性セルロース繊維は、第1および第2繊維層に、各繊維層の総質量を基準として10質量%以上90質量%以下含まれる。撥水性セルロース繊維の含有割合が10質量%未満であると、柔軟性(特に湿潤時の柔軟性)が低下し易く、摩擦力が小さくなり易い。撥水性セルロース繊維の含有割合が90質量%を超えると、各繊維層内、および、第1および第2繊維層と中間繊維層との間で、繊維同士が十分に交絡せず、積層不織布の一体性が損なわれる場合がある。また、保水性が小さくなる場合がある。撥水性セルロース繊維の含有割合は、15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、25質量%以上であってよい。撥水性セルロース繊維の含有割合は、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよい。
【0074】
外層用親水性セルロース繊維は、第1および第2繊維層に、各繊維層の総質量を基準として10質量%以上90質量%以下含まれる。外層用親水性セルロース繊維の含有割合が10質量%未満であると、各繊維層内、および、第1および第2繊維層と中間繊維層との間で、繊維同士が十分に交絡せず、積層不織布の一体性が損なわれる場合がある。また、積層不織布を皮膚被覆シートとして使用したとき、化粧料等の液体の濡れ性が低くなって皮膚への密着性が低くなる場合がある。外層用親水性セルロース繊維の含有割合が90質量%を超えると、摩擦力が低下し易い。さらに、各繊維層内において繊維同士の交絡が緊密になりすぎて、十分な厚みが得られ難い。外層用親水性セルロース繊維の含有割合は、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってよい。外層用親水性セルロース繊維の含有割合は、85質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、75質量%以下であってよい。
【0075】
第1および第2繊維層は、撥水性セルロース繊維および外層用親水性セルロース繊維以外の他の繊維を含み得る。他の繊維の質量割合は、各繊維層の総質量を基準として、30質量%以下であってよく、20質量%であってよく、10質量%以下であってよい。積層不織布表面の摩擦力および凹凸発生を考慮すると、第1および第2繊維層は、撥水性セルロース繊維および外層用親水性セルロース繊維のみで構成されてよい。
【0076】
第1繊維層における撥水性セルロース繊維の質量割合と、第2繊維層における撥水性セルロース繊維の質量割合とは、同程度であってよく、異なっていてもよい。なかでも、第1および第2繊維層における撥水性セルロース繊維の質量割合は、同じか同程度であることが好ましい。この場合、積層不織布の両外層の対象物に対する摩擦力が同程度になる。そのため、いずれの層も対象物への接触面として利用できて、便利である。具体的には、第1繊維層および第2繊維層における撥水性セルロース繊維の質量割合の差は、10%以下が好ましい。上記差は、8%以下であってよく、5%以下であってよい。
【0077】
上記の各繊維の含有割合は、他の層と一体化される前の各繊維層に含まれる繊維の割合である。例えば、積層不織布において、中間繊維層および/または第2繊維層を構成する繊維の一部が第1繊維層に混入しているとしても、当該混入した繊維は第1繊維層に含まれるものとはならない。中間繊維層における繊維の含有割合も同様である。
【0078】
第1および第2繊維層の目付は特に限定されない。第1および第2繊維層の目付は、10g/m2以上であってよく、15g/m2以上であってよく、20g/m2以上であってよい。第1および第2繊維層の目付は、70g/m2以下であってよく、50g/m2以下であってよく、30g/m2以下であってよい。第1および第2繊維層の目付がこの範囲であると、繊維は交絡し易くなり、また交絡による繊維層表面の荒れが抑制され易い。
【0079】
第1繊維層と第2繊維層との目付の比(第1/第2)は、例えば、2/1~1/2であってよく、1.5/1~1/1.5であってよい。この場合、積層不織布の両外層の対象物に対する密着性が同程度になり易い。
【0080】
上記の各繊維層の目付は、他の層と一体化される前の各繊維層の目付である。例えば、積層不織布において、中間繊維層および/または第2繊維層を構成する繊維の一部が第1繊維層に混入しているとしても、当該混入した繊維の質量は第1繊維層の目付に含まれない。中間繊維層の目付も同様である。
【0081】
外層に関し、撥水性セルロース繊維の繊度をFRとし、親水性セルロース繊維の繊度をFHとしたとき、撥水性セルロース繊維の繊度FRと親水性セルロース繊維の繊度FHとの比(FR/FH)は、0.2以上5以下であってよい。繊度比(FR/FH)が上記範囲内にあると、例えば、積層不織布を皮膚被覆シートとして用いたときに、触感が柔らかくなって装着感が向上し、また、長時間使用しても良好な密着性を示し得る。繊度比(FR/FH)は、0.5以上であってよく、0.9以上であってよく、1以上であってよく、1.2以上であってよい。繊度比(FR/FH)は、3.5以下であってよく、3以下であってよく、2以下であってよい。一態様において、繊度比(FR/FH)は、1以上2以下である。
【0082】
(中間繊維層)
中間繊維層は、第1繊維層と第2繊維層の間であって、積層不織布の内側に位置する。中間繊維層は、合成繊維を含む。中間繊維層は、積層不織布のクッション性、液体保持性およびハンドリング性の向上、さらには変形からの容易回復性に寄与する。合成繊維は、接着性繊維として含まれていてもよい。積層不織布全体の柔軟性を考慮すると、合成繊維は互いに熱接着されていない状態、すなわち接着性繊維として機能しない状態で含まれることが望ましい。
【0083】
合成繊維は、中間繊維層に、中間繊維層の総質量を基準として、50質量%以上含まれる。これにより、積層不織布のクッション性およびハンドリング性が高まる。合成繊維の含有割合は、70質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、100質量%であってよい。
【0084】
中間繊維層は、合成繊維以外の他の繊維を含み得る。他の繊維の質量割合は、中間繊維層の総質量を基準として、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。クッション性等を考慮すると、中間繊維層は、合成繊維のみで構成されてよい。
【0085】
中間繊維層の目付は、例えば7g/m2以上、特に12g/m2以上であってよく、より特には13g/m2以上であってよい。中間繊維層の目付の上限は、例えば30g/m2であり、特に25g/m2、より特には20g/m2である。中間繊維層の目付が上記範囲であると、各層間において繊維同士は十分に交絡し易く、また、保水性が向上し易い。
【0086】
中間繊維層と第1および第2繊維層との目付の比(中間/第1(あるいは第2))は、例えば7/1~1/7であり、3/1~1/3であってよく、1.5/1~1/1.5であってよい。目付の比が上記範囲であると、各層間において繊維同士は十分に交絡し易く、また、保水性が向上し易い。
【0087】
(積層不織布)
本実施形態に係る積層不織布は、上記の第1繊維層、第2繊維層および中間繊維層を含み、これらの繊維層は、繊維同士の交絡により一体化されている。そのため、積層不織布は、適度な強伸度(具体的には、引張強さ、伸び率、10%伸長時応力)を有する。
【0088】
本実施形態に係る積層不織布は、適度な摩擦力を有する一方で、表面は平滑である。さらに、本実施形態に係る積層不織布は、クッション性に優れ、変形から容易に回復し得る。そのため、ドライタイプおよびウェットタイプの各種用途に使用される。積層不織布の用途としては、例えば、清掃用ワイプ(床用、窓用、家具用等)、吸収性物品(使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、生理用品、尿取りパッド、ペット用シート等)、化粧用材料(フェイスマスク等の皮膚被覆シート、クレンジングシート等の清浄シート等);衛生材料(湿布材、シーツ、タオル、産業用マスク、衛生用マスク、ヘアキャップ等);包装用材料(脱酸素剤、カイロ、温シップ、食品包装材);フィルター;ボディケア用品(制汗シート、角質ケアシート、体用の保湿シート、痩身用シート、お尻ふき、清拭シート、冷却シート)が挙げられる。
【0089】
〈動摩擦係数およびその変動係数〉
動摩擦係数MIUは、摩擦力、すなわち滑りやすさの程度を示す。動摩擦係数MIUが大きいほど、摩擦が大きく、対象物上を滑り難い。動摩擦係数MIUが小さいほど、摩擦が小さく、対象物上を滑り易い。本実施形態に係る積層不織布は、適度な動摩擦係数MIUを有しており、ある程度の抵抗を示しながら、対象物上で容易に移動したり、対象物から容易に剥離したりできる。対象物に対する適度な抵抗感は、積層不織布の密着性を向上させ得る。
【0090】
乾燥状態の積層不織布の、第1および第2繊維層表面におけるMD方向の動摩擦係数MIUMDは、例えば0.1以上であり、0.13以上であってよく、0.15以上であってよい。動摩擦係数MIUMDは、0.5以下であってよく、0.4以下であってよく、0.38以下であってよい。一態様において、動摩